風と、砂張でつくる 最高級の余韻。中町の鋳物風鈴。

LOBBYストア

小田原の伝統工芸のひとつに「鋳物」があります。
この鋳物の技術を使って、
とても澄んだ音を創り出す「小田原風鈴」を
ご存知でしょうか。

かの黒澤明も、
映画「赤ひげ」の中でとても印象的に
使用しています。
(なんでも、「最高の風鈴を持ってこい」と
指示をだしたら持ってこられたのだとか)


LOBBYストアでも販売しております。
店舗営業時は路面に出して
通りを歩く方々にその音色を聴いて
いただいておりました。
なかには風鈴の音に導かれ
ご来店いただいたお客様も
いらっしゃいました。


今回、LOBBYで取り扱っている
柏木さんの小田原風鈴をご紹介するために、
「おとなりさん」という
小田原の自治会活動を紹介する
フリーマガジンで紹介された際の
記事を掲載いたします。

何を隠そう、この「おとなりさん」は
LOBBYの前身とも言える媒体ですので
合わせてお楽しみください。


(「おとなりさん」は現在休刊中です。)

風と、砂張でつくる 最高級の余韻。
中町の鋳物風鈴。

柏木美術鋳物研究所
柏木さんの風鈴

監修…高田美実(器・生活道具 日和 店主)

加工が難しく、
その余韻の美しさから
「最高級の風鈴」と評される
「砂張」製の小田原風鈴。
故・黒澤明監督も惚れ込んだという
風鈴の音を求めて、
『柏木美術鋳物研究所』の、
柏木さんを訪ねました。

小田原市中町の
『柏木美術鋳物研究所』を訪ねると、
「リーン。リリーン。」と、
梅雨のムシムシとした気持ちが
澄んでいくような、
きれいな音が出迎えてくれた。  

柏木さんが作っている風鈴は、
よくあるガラス製のものではなく、
通称「小田原風鈴」と呼ばれる
「真鍮」製と「砂張(さはり)」製の
鋳物で出来た風鈴だ。  

聞きなれない「砂張」という金属は、
仏具の「おりん」などにも
使われている合金のことで、
「砂張」でつくった風鈴は
鳴らした時の音がとても澄んでいて、
しかも驚くほど美しく
余韻長く続くため、
「最高級の風鈴」とされている。
その音色は、
あの黒澤明監督をも魅了し、
映画「赤ひげ」の浅草寺の
境内のシーンで
非常に印象的に使用されている。

柏木美術鋳物研究所は、
もともと鋳物の中でも
「鳴物」を主に取扱っている。
かつてはシンバルや銅鑼(どら)なども
制作していた。  

柏木家の歴史はとても古く、
貞享3(1686)年、
大久保忠朝に従属し、
佐倉藩を経て小田原の鍋町に移り住み、
代々鋳物業を営んでいる。
現在の社長は柏木照之さん。
今年37歳。
「初めて鋳物の世界に触れたのは、
浪人生だった19歳の時。
祖父の兄弟が営んでいた
柏木美術鋳物研究所に手伝いに行ったんです。
それからは大学が休みの時も手伝っていました。」  

27歳のときに
柏木美術鋳物研究所社長に就任して以来、
型の制作、型への鋳込み、
鋳込んだものの加工、
着色や組み立て、仕上げ、
仕上りのチェックなど、
鋳物制作のすべての行程を担当している。

工場へ案内してもらうと、
地面が砂地の部分とコンクリートの
部分に分かれており、
金属が溶けたときに出る
線香花火のような匂いが漂っている。
コンクリートの方の隅には
直径70㎝位の丸い穴があいていて、
「炉」になっている。
「炉」の中には、
高温に熱せられオレンジ色になった
「るつぼ」が入っており、
この中で金属を溶かす。
実は音をよくするために、
合金の配合も
それぞれオリジナルのレシピがあるそうだ。

溶かした金属を型へ流し込む
「鋳込み」の作業は、
横の砂地で行う。
炉で溶かした、
摂氏1000℃を越える蛍光オレンジ色の、
液体のような金属を、
柄の長いおたまですくい、
短い棒でテコの原理を利用して
バランスをとりながら型に流し込んでいく。
流し込み方で
金属の固まり方も変わってしまうし、
急がないと穴が空いてしまう。
繊細さだけでなくスピードも重要だ。

「同じ型を使っても、
鋳込み方で音が全然変わっちゃいますからね。」
そう言いながら、
どんどん鋳込んでいく。  

風鈴はとても薄いので
鋳込んでから5~10分程で固まり、
冷えて縮む。
型は軍手をした手でひとつずつ外していく。
黄色い「中子」と呼ばれる
内側の型は使い捨てで、
外側の素焼の型は
数回使用した後に処分するそうだ。
実はこの型もひとつひとつ
柏木さんが自分で作っている。

柏木さんは、
小田原高校を卒業後、
浪人生を経て中央大学の理工学部へ入学。
大学卒業後、
本格的に鋳物職人になった。
どうしてこのような経緯になったのか、尋ねた。
「大学生の時は、実は将来はSE
(システム・エンジニア)になろうかな、
と思っていました。
元々パソコンが好きで、
自作なんかもしていました。
まあ、自作が流行った時代でしたからね。」
と小さく笑ったあと、
真剣な顔でこう続けた。

「SEのような現代の技術屋と、
鋳物のような昔からの技術屋と、
時代は違っても、
どちらも自分の腕を磨いて、
きっちりと仕事をしていく
といった面では同じなのかな、
と思っています。」

時代が変わっても、
職人にとって必要な「資質」
というのは変わらない。
柏木さんはもともと
その「資質」を持っていた。

そして、小さな偶然を経て、
伝統の小田原風鈴の技術は
幸運にも柏木さんに継承されたのだ。
「リーーン」という「砂張」の風鈴の
澄んだ響きの余韻に、
そんな職人たちの悠久の連なりを感じた。

さりげなく活けられた紫陽花。
そこにまるで生きているかのように繊細な砂張で出来た蟹が。
代々磨かれてきた技術の高さと
受け継がれたセンスが隅々に息づいている。

工場のとなりにあるギャラリーでは、
商品の販売も行っている。
『柏木美術鋳物研究所』 小田原市中町3丁目1-22
問い合わせ TEL.0465-22-4328

「梅雨の時期が身体が暑さに慣れていなくて一番辛いです。
汗が出るようになる夏場は比較的に楽ですね。」
柏木さんは風鈴だけでも年間2千個以上を作り上げる。

(おとなりさんvol.6 2015.8.1発行号 掲載記事)


小田原風鈴 柏木美術鋳物研究所「御殿風鈴」

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